私は絵を描くことが好きだった。過去形です。
幼稚園の頃までは、塗り絵に漫画に一人でコツコツ書いたり塗ったりすることが楽しかった。
小学1年生の頃の写生大会では「賞状」も頂いた。私が描く絵は風景か動物。特に動物園の動物たちを描くのが好きだった。でも同じクラスに本当に絵の上手な女の子が二人いた。きれいな絵を描くし、とてもおとなしいけれどお顔もきれいな二人だった。TVのアニメの絵も、漫画雑誌のイラストも人から頼まれるほど上手な子たちだ。休み時間は彼女たちの机にはいつも何人かが並んで絵を描いてもらっていた。もちろん私も並んで描いてもらった。本当にきれいな絵だった。それを見て家に帰って真似してみるけれど、同じようには描けない。
私はしばらくして絵が描けなくなってしまった。
それから何年か経ち、美術の授業で5分間クロッキーという講義を受けた。まずは自分の右手で自分の左手を描いてみようという授業だった。描いていくうちになんだか楽しい気持ちになって行く。そしてクロッキーを繰り返すうちにまた絵を描く楽しみを感じていくことになった。
母が最初の入院をしたときはコロナだった。会うことはできない。私は毎日イラストとその日の出来事を描いて、三日に一度、病院に届けた。うちにいる犬のこと、猫のこと。その日の夕食、お庭の花。買い物の様子など。ほとんど日常の出来事。
病院でもそれぞれが隔離状態だったらしいが、母は楽しみがあったから我慢できたと言ってくれた。
そして亡くなる前の入院の時、時々母の好きなものを描いて持って行った。もうほとんどしゃべることができなくなっていたけれど、絵を見せた時だけは、にっこりと笑ってくれた。私の絵は下手だ。父の娘なのに下手っぴいだ。でも描くことが好きだから、少しでも母の気を紛らわせることができたのだと思っている。
良い娘ではなかったけれど、しんどい時に気分を変えるお手伝いが出来ていたとしたら、私は良かったと思える。(お母さん、本当はどうだった??)
10月からEテレの「絵を描く(柴崎春通)」に挑戦してみようと思っている。


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